第1章: C#の変数とデータ型

プログラミングにおいて、変数やデータ型は最も基本的でありながら非常に重要な概念です。この章では、C#での変数の宣言方法と、データの種類による「データ型」について詳しく説明します。変数とデータ型を理解することで、データを効率的に扱い、エラーの発生を未然に防ぐことができるようになります。さらに、データ型の変換や適切な型の選択方法も紹介します。


1.1 基本的なデータ型

C#には、様々な種類のデータを扱うための「データ型」が用意されています。それぞれのデータ型には、特定の役割や使用する場面があり、数値や文字列、ブール値など、異なるデータを効率的に扱うために使用されます。ここでは、基本的なデータ型とその役割について解説します。

1.1.1 整数型 (int, long, short, byte)

整数型は、小数部分を持たない数値を扱います。用途に応じて、異なる範囲の整数型が用意されています。

  • int(整数): 最も一般的な整数型で、-2,147,483,648から2,147,483,647の範囲を扱えます。
  • long(長整数): より広範囲の整数を扱うことができ、-9,223,372,036,854,775,808から9,223,372,036,854,775,807までの値をサポートします。
  • short(短整数): 小さな範囲の整数で、-32,768から32,767までの範囲の値を取ります。
  • byte(バイト): 0から255の範囲の正の整数のみを扱い、メモリの節約が必要な場面で使用されます。

例:

int age = 25;
long distance = 9876543210;
short temperature = -10;
byte level = 100;
1.1.2 浮動小数点数型 (float, double, decimal)

浮動小数点数型は、小数を含む数値を扱います。数値が小数を持つかどうかで、適切な型を選択することが重要です。

  • float: 単精度の小数型で、約7桁の精度を持ちます。小数点以下の精度が多少失われても問題ない場合に適しています。小数点付き数値の後にfを付けて表記します。
  • double: 倍精度の小数型で、約15桁の精度を持ちます。最も一般的な浮動小数点数型で、doubleがデフォルトの小数型として扱われます。
  • decimal: 非常に高精度な小数型で、特に金融や科学計算に適しています。小数点付き数値の後にmを付けて表記します。

例:

float price = 19.99f;
double distance = 12345.6789;
decimal balance = 1000.75m;
1.1.3 文字列型 (string)

文字列型は、テキストデータを扱います。例えば、名前や住所、説明文など、文字の並びをそのまま扱う場合に使用されます。

例:

string name = "John Doe";
string greeting = "Hello, World!";
1.1.4 ブール型 (bool)

ブール型は、truefalseのいずれかの値を持ち、主に条件分岐などで使用されます。プログラムの中で「真か偽か」の二択を判断するために重要な役割を果たします。

例:

bool isActive = true;
bool isFinished = false;

1.2 変数の宣言と初期化

変数とは、データを一時的に保存するための箱のようなものです。変数には「名前」を付け、必要なデータ型に合わせて宣言します。C#での変数の宣言には以下の構文を用います。

データ型 変数名 = 初期値;

例えば、年齢を格納するためにint型の変数ageを宣言し、値を25に初期化するコードは以下のようになります。

int age = 25;

変数の宣言だけ行い、後から値を代入することもできます。この場合、変数は初期化されていないため、デフォルト値が代入されます。

例:

int age;
age = 25;

1.3 型変換

異なるデータ型同士を使う場合、型の互換性が求められます。C#では「暗黙的な型変換」と「明示的な型変換」の2種類の型変換方法が存在します。

1.3.1 暗黙的な型変換

暗黙的な型変換とは、プログラマーが明示的に指示をしなくても、C#が自動的に行う型変換のことです。例えば、int型からlong型、float型からdouble型など、データの範囲が広がる方向に変換される場合に暗黙的な型変換が行われます。

例:

int smallNumber = 100;
long largeNumber = smallNumber;
1.3.2 明示的な型変換

明示的な型変換は、データ型が異なる値を代入する際に「キャスト」を使用して、意図的に型変換を行うものです。キャストを行うときは、データの一部が失われる可能性があるため注意が必要です。

double pi = 3.14159;
int integerPi = (int)pi;

この場合、double型のpiint型に変換され、小数部分(.14159)が切り捨てられて3integerPiに代入されます。


1.4 型の使い分け

変数の型を適切に選択することは、メモリ効率やコードの読みやすさに関わります。例えば、計算結果を正確に保ちたい場合はdecimalを使い、精度が多少犠牲になっても軽量なデータ型でよい場合はfloatを使います。

  1. メモリ効率:
    • メモリに制限がある場合、より小さな型(例: shortbyte)を使うことでメモリを節約できます。
  2. 精度:
    • 計算に高い精度が必要な場合はdecimal、高速な処理を重視する場合はdoublefloatを使用します。
  3. 可読性:
    • 変数名やデータ型が適切であることにより、他の開発者がコードを理解しやすくなります。

まとめ

この章では、C#で使われる基本的なデータ型について学びました。intfloatstringboolなどの基本データ型に加え、変数の宣言と初期化、型変換の方法を解説しました。データ型を正しく使い分け、適切に型変換を行うことで、効率的でエラーの少ないプログラムを作成することができます。


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