プログラムを実行中に発生する予期しないエラーや問題に対応するために、C#には例外処理という機能があります。例外処理を理解し、適切に活用することで、コードの信頼性と堅牢性を向上させることができます。ここでは、例外処理の基本概念とともに、C#の例外処理における主要な構造である try-catch
構文、例外のスローとキャッチ、そして finally
ブロックについて詳細に解説します。
6.1 try-catch構造
C#で例外処理を行うための基本構造が try-catch
文です。この構造では、エラーが発生する可能性のあるコードを try
ブロックに書き、エラーが発生した場合に実行される処理を catch
ブロックに書きます。try
ブロック内で例外が発生すると、その時点で処理が中断され、直ちに対応する catch
ブロックに処理が移ります。
以下に、基本的な try-catch
の例を示します。
try
{
int[] numbers = { 1, 2, 3 };
Console.WriteLine(numbers[5]); // インデックス範囲外のエラーを発生させる
}
catch (IndexOutOfRangeException ex)
{
Console.WriteLine("エラー: 配列のインデックスが範囲外です。");
Console.WriteLine("詳細: " + ex.Message);
}
上記の例では、try
ブロック内でインデックス範囲外のエラーが発生します。このエラーは IndexOutOfRangeException
という特定の例外型に該当するため、catch
ブロック内でこの例外を捕捉し、適切なエラーメッセージを表示します。
6.1.1 複数のcatchブロック
try
ブロックに複数のエラーが発生する可能性がある場合、複数の catch
ブロックを使って、異なる種類の例外に対して個別の処理を行うことができます。C#では、より具体的なエラーの種類から順に catch
ブロックが評価されるため、一般的な Exception
は最後に記述します。
try
{
int number = int.Parse("ABC"); // 数値への変換エラーを発生させる
}
catch (FormatException ex)
{
Console.WriteLine("エラー: 数値形式が無効です。");
}
catch (Exception ex)
{
Console.WriteLine("一般的なエラーが発生しました。");
}
この例では、最初の catch
ブロックが FormatException
に対応し、数値形式の変換エラーをキャッチします。それ以外のすべての例外は次の catch
ブロックで捕捉され、エラーメッセージを表示します。
6.2 例外のスローとキャッチ
C#では、意図的に例外を発生させることも可能です。これは、処理が異常な状態にあることを他のコードに知らせるために便利です。例外をスローするには、throw
キーワードを使用します。例えば、特定の条件が満たされない場合に例外をスローし、そのエラーをキャッチするコードを書くことができます。
public static void CheckAge(int age)
{
if (age < 18)
{
throw new ArgumentOutOfRangeException("age", "年齢は18歳以上である必要があります。");
}
Console.WriteLine("年齢は基準を満たしています。");
}
try
{
CheckAge(15); // 18歳未満なので例外をスローする
}
catch (ArgumentOutOfRangeException ex)
{
Console.WriteLine("エラー: " + ex.Message);
}
上記の例では、CheckAge
メソッドが引数 age
を受け取り、18歳未満であれば ArgumentOutOfRangeException
をスローします。try
ブロック内でこのメソッドを呼び出し、条件を満たさない年齢(15歳)を渡すと、例外が発生して catch
ブロックでキャッチされます。
6.2.1 再スロー
例外の再スロー(rethrow)も可能です。特定の処理を行った後に例外を再度スローして、上位の呼び出し元でさらに詳細なエラーハンドリングを行いたい場合に役立ちます。再スローするには、throw
キーワードを単独で使います。
try
{
CheckAge(15);
}
catch (ArgumentOutOfRangeException ex)
{
Console.WriteLine("エラーが発生しました。");
throw; // 例外を再スローする
}
6.3 finallyブロックの使用
try-catch
構造には、finally
ブロックを追加することができます。finally
ブロックは、例外の発生に関わらず必ず実行されるコードを含む場所です。主に、リソースの解放やクリーンアップ処理に使用されます。たとえば、ファイルのストリームやデータベース接続を閉じる処理などが finally
ブロックで行われます。
以下に、finally
ブロックの基本的な例を示します。
FileStream file = null;
try
{
file = new FileStream("example.txt", FileMode.Open);
// ファイル処理のコード
}
catch (FileNotFoundException ex)
{
Console.WriteLine("エラー: ファイルが見つかりませんでした。");
}
finally
{
if (file != null)
{
file.Close(); // ファイルが存在する場合は必ず閉じる
}
Console.WriteLine("ファイル処理が終了しました。");
}
上記の例では、ファイルが見つからなかった場合でも finally
ブロック内のコードが実行されます。これにより、ファイルリソースが適切に閉じられるため、メモリリークや他のリソース関連の問題が防止されます。
6.3.1 try-catch-finallyの組み合わせ
try
と catch
、finally
のすべてを組み合わせると、エラー発生時の処理、例外がキャッチされた場合の特定の処理、そしてリソースのクリーンアップ処理まで一連の流れをカバーできます。これは多くのアプリケーションで、安定性を向上させるための標準的な例外処理構造です。
try
{
Console.WriteLine("計算を開始します。");
int result = 10 / int.Parse("0"); // 整数のゼロ除算エラーを発生させる
}
catch (DivideByZeroException ex)
{
Console.WriteLine("エラー: ゼロによる除算は許可されていません。");
}
catch (FormatException ex)
{
Console.WriteLine("エラー: 不正な形式の入力がありました。");
}
finally
{
Console.WriteLine("計算処理が完了しました。");
}
この例では、try
ブロックでゼロ除算エラーと形式エラーをキャッチし、それに続いて finally
ブロックで計算処理が終了したことを必ず出力しています。これにより、プログラムの実行が中断されることなく、終了処理が確実に行われます。
まとめ
C#の例外処理では、try-catch
構造を使用してエラーを管理し、プログラムが予期しないエラーで停止しないようにします。例外のスローとキャッチは、異常な条件に対処するための重要な技術です。また、finally
ブロックは、エラーの有無にかかわらず実行する必要があるコードを配置するための役割を担っています。
これらの技術を適切に活用することで、堅牢で信頼性の高いコードを作成し、予期せぬエラーからアプリケーションを守ることができます。
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