Rustの開発を始めるには、まず環境を構築する必要があります。ここでは、Rustのインストール手順、開発環境の設定、使いやすいツールやエディタの紹介、そして最初のプログラム「Hello, World」の実行までを詳しく解説していきます。
2.1 Rustのインストール方法
Rustの公式なインストールツールは「Rustup」です。Rustupは、Rustツールチェーンを管理するためのツールで、Rustのインストールやバージョン管理、ビルドツールのアップデートを簡単に行えます。Rustのインストール方法は、主に以下の手順に従います。
2.1.1 Rustupのインストール
Rustupをインストールするには、以下のコマンドを実行します。これはLinux、macOS、およびWSL(Windows Subsystem for Linux)上で動作します。
curl --proto '=https' --tlsv1.2 -sSf https://sh.rustup.rs | sh
上記のコマンドを実行すると、Rustのインストールスクリプトが実行され、インストールが開始されます。スクリプトは、ユーザーに対してインストールを確認するプロンプトを表示するため、指示に従って「1」を入力することでインストールを進めることができます。Windowsの場合は、公式Rustのダウンロードページからインストーラーをダウンロードして実行してください。
2.1.2 環境変数の設定
インストールが完了すると、Rustの実行ファイルのパスが設定される必要があります。インストール後、以下のコマンドで現在のターミナルセッションにパスを追加します。
source $HOME/.cargo/env
これにより、RustとCargo(Rustのパッケージマネージャー)がパスに追加され、どのディレクトリからでもRustコマンドを使用できるようになります。
2.1.3 インストールの確認
Rustのインストールが成功したかを確認するために、以下のコマンドを入力します。
rustc --version
上記のコマンドを実行すると、インストールされたRustのバージョンが表示されるはずです。表示されない場合は、パスが正しく設定されているか再確認してください。
2.2 開発環境の設定
Rustのインストールが完了したら、開発環境を整えてプログラミングを効率化しましょう。Rustはどのエディタでも使えますが、いくつかのエディタやIDEにはRustに特化したプラグインがあり、効率よく開発を進められる環境が整っています。ここでは代表的なエディタとその設定手順を紹介します。
2.2.1 Visual Studio Code(VSCode)
VSCodeは、Rustの開発に非常に人気のあるエディタです。拡張機能が豊富で、Rust用のプラグインも充実しています。以下の手順でRust用の環境を整えましょう。
- VSCodeのインストール
VSCodeがインストールされていない場合、公式サイトからダウンロードしてインストールします。 - Rustプラグインのインストール
VSCodeの拡張機能マーケットプレイスから「rust-analyzer」をインストールします。rust-analyzerは、Rustコードの補完、リファクタリング、エラー検出など多機能なサポートを提供してくれるプラグインです。 - その他のプラグイン
「CodeLLDB」をインストールすると、Rustコードのデバッグが可能になります。また、必要に応じて「Prettier」や「Format on Save」などのプラグインでコード整形機能を追加すると、コードが自動的に美しく整形されるようになります。 - 設定の最適化
VSCodeの設定(settings.json)で、rust-analyzerの機能を最適化します。例えば、コード補完やエラーチェックの頻度を上げることで、快適な開発環境を構築できます。
{
"rust-analyzer.cargo.runBuildScripts": true,
"rust-analyzer.checkOnSave.command": "clippy"
}
2.2.2 IntelliJ IDEA(またはCLion)
IntelliJ IDEAやCLionは、JetBrainsが提供するIDEであり、Rust用のプラグインもあります。これらのIDEは豊富な機能と高度なデバッグ機能を提供し、Rustの開発にも適しています。
- プラグインのインストール
「Rust」プラグインをインストールします。このプラグインには、コード補完、エラー検出、リファクタリング機能などが含まれています。 - デバッグ機能
IntelliJ IDEAやCLionには高度なデバッグ機能が内蔵されており、Rustコードのデバッグに最適です。LLDBを設定することで、ブレークポイントの追加や変数のトラッキングが可能になります。
2.2.3 他のエディタ
他にもAtom、Sublime Text、Emacs、VimなどでRustの開発を行うことも可能です。それぞれにRust用のプラグインが用意されていますので、使いやすいエディタで開発を行うと良いでしょう。
2.3 最初のプログラム「Hello, World」の実行
開発環境が整ったら、Rustで最初のプログラムを実行してみましょう。まずは「Hello, World」と表示する簡単なプログラムを作成します。
2.3.1 新しいプロジェクトの作成
Rustでは「Cargo」というツールがデフォルトでインストールされており、プロジェクトの作成や管理を容易にしてくれます。以下のコマンドで、新しいプロジェクトを作成します。
cargo new hello_world
このコマンドを実行すると、hello_world
という名前のディレクトリが作成され、その中にRustのプロジェクトが初期化されます。hello_world
ディレクトリには、以下のようなファイルとフォルダが含まれています。
- Cargo.toml: プロジェクトの依存関係やバージョン情報が記述されているファイル。
- src/main.rs: Rustプログラムのエントリーポイントとなるファイル。
2.3.2 「Hello, World」プログラムのコード
src/main.rs
ファイルを開き、以下のコードが記述されていることを確認します。
fn main() {
println!("Hello, World!");
}
このコードは、Rustにおける最も基本的な構文を使っています。fn main()
はエントリーポイントを定義する関数であり、println!
マクロは標準出力に文字列を表示するために使用されます。
2.3.3 プログラムのビルドと実行
Cargoを使って、プログラムをビルドして実行してみましょう。
- ビルド
ターミナルで、プロジェクトのディレクトリに移動し、以下のコマンドを実行します。cargo build
このコマンドにより、Rustプログラムがコンパイルされ、実行可能なバイナリが作成されます。成功すれば、「target/debug」ディレクトリ内にバイナリが生成されます。 - 実行
プログラムを実行するには、以下のコマンドを使用します。cargo run
このコマンドは、ビルドと実行を一度に行うため、コードの修正後すぐに実行結果を確認できます。ターミナルに「Hello, World!」と表示されれば、プログラムは正常に動作しています。
2.3.4 追加のビルドオプション
Rustのビルドには、リリースビルドとデバッグビルドの2種類が用意されています。
- デバッグビルド:
cargo build
コマンドで行われるビルドで、デバッグ情報を含んでいます。開発中はこのビルドモードがデフォルトで使用されます。 - リリースビルド: 本番環境向けに最適化されたビルドで、
cargo build --release
で生成できます。リリースビルドは実行速度が速いですが、デバッグ情報は含まれません。
2.4 まとめ
この章では、Rustのインストール方法から開発環境の設定、最初のプログラムの実行方法までを学びました。Rustの環境構築は一見複雑に思えるかもしれませんが、RustupとCargoを使うことでシンプルに管理でき、開発効率が大幅に向上します。
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